がん予防に葉酸が効果があるは本当?

がん予防に葉酸が効果があるは本当?

疑問に思う女の子

 

葉酸の効果のひとつに「がん予防」があると言われていますが、本当なのでしょうか?

 

葉酸サプリの販売サイトを見てもあまり「がん予防」には触れていません。

 

しかしサプリ紹介サイトや葉酸に関するページには「がんを予防できる」等の文言が見られます。

 

この葉酸の効能は本当なのか、調べてみました。

 

目次

  1. 葉酸とがんの関係
    1. 葉酸摂取に関する試験の結果はさまざま
  2. 葉酸はがん予防に有効なのか?
  3. まとめ

 

葉酸とがんの関係

葉酸をより多く摂取すれば、大腸がんや肺がん、胃がんなどのリスクが低下することは、多くの疫学研究によって示唆されています。

 

葉酸は、メチオニンの代謝やDNAの複写、細胞分裂などで重要な役割を果たしますので、それらが「がん」の発症に影響している可能性も十分にあります。

 

しかし、がん発症にたいして、葉酸が具体的にどのような効果があり、どのように関係しているかの詳細は、いまだ研究によって明らかにされてはいません。

 

葉酸摂取に関する試験の結果はさまざま

欧米では葉酸摂取とがんリスクの低下に関する臨床試験がいくつか行われていますが、その試験結果はさまざまです。

 

たとえば、フランスで行われた実験では、ある疾患に罹ったことのある2,501人に対し、

 

  • 葉酸→560μg
  • ビタミンB6→3mg
  • ビタミンB12→20μg

 

のサプリメントを5年間毎日連続で飲んでもらった結果、がんの発症リスク低下には有効でなかった、と結論付けています。

 

【参考論文】Andreeva VA, Touvier M, Kesse-Guyot E, Julia C, Galan P, Hercberg S 「B vitamin and/or ω-3 fatty acid supplementation and cancer: ancillary findings from the supplementation with folate, vitamins B6 and B12, and/or omega-3 fatty acids (SU.FOL.OM3) randomized trial.」Arch Intrem Med 2012 Apr 9;172(7):540-7

 

また、ノルウェーで行われた試験の併合解析では、心疾患のある患者3,411人に、

 

  • 葉酸→800μg
  • ビタミンB12→400μg

 

を39ヶ月間投与した結果、補給しない場合と比較して、がん発症率は21%、がんによる死亡率が38%増加しました。

 

つまり、葉酸を多く摂取したほうが、がん発症率もがんによる死亡率もともに上昇したのです。

 

【参考論文】Ebbing M, Bønaa KH, Nygård O, Arnesen E, Ueland PM, Nordrehaug JE, et al.「Cancer incidence and mortality after treatment with folic acid and vitamin B12.」JAMA 2009 Nov 18;302(19):2119-26

 

これら二つの結果を見れば、葉酸はがんリスクを低下させないどころか、がん発症リスクを逆に高めているように思えます。

 

しかしいっぽうで、大腸がんに関しては次のような試験結果も出ています。

 

アメリカで行われたコホート研究は大変規模の大きいもので、50~71歳のアメリカ人525,000人以上を対象として行われました。

 

この研究結果によれば、1日の総葉酸摂取量が900μg以上の人は、総葉酸摂取量200μg未満の人と比べて大腸がんのリスクが30%低いことが判明しています(平均フォロー期間は9.1年)。

 

【参考論文】Gibson TM, Weinstein SJ, Pfeiffer RM, Hollenbeck AR, Subar AF, Schatzkin A, Mayne ST, Stolzenberg-Solomon R.「Pre- and postfortification intake of folate and risk of colorectal cancer in a large prospective cohort study in the United States.」Am J Clin Nutr. 2011 Oct;94(4):2053-62

 

葉酸はがん予防に有効なのか?

これらの結果を見ると、結局有効なのか無効なのか、むしろ逆効果なのか、われわれ素人には理解不能です。

 

では現在の医学界の見解はどうなのか?

 

厚生労働省の運営する「「統合医療」情報発信サイト」の医療関係者向けのページでは、

 

葉酸塩は、大腸癌のリスク、場合によってはその他のがんのリスクに対して、曝露の量やタイミングによって異なる2つの役割を有する可能性があることが示唆される。前癌病変が形成される前に中用量の葉酸を摂取した場合は正常組織における癌の発生を抑制する可能性があるが、一方で、前癌病変を確認した後に高用量の葉酸を摂取した場合は、がんの発生や進行を促進する可能性がある。

 

「「統合医療」情報発信サイト」-医療関係者の方へ-葉酸より

 

としています。

 

また同サイトの「一般の方へ」のページでは

 

食品に天然の形で含まれる葉酸塩は、種々の形態のがんの発生リスクを低下させる可能性があります。しかし、葉酸塩の摂取量と摂取のタイミングによって、効果が異なる可能性があります。がんになる前に適量の葉酸を摂取することは、がんの発症リスクを低下させる可能性がありますが、がん(特に結腸・直腸癌)を発症した後に高用量の葉酸を摂取することは、がんの進行を早める恐れがあります。

 

「「統合医療」情報発信サイト」-一般の方へ-葉酸より

 

この二つを要約すると、

 

葉酸にはがん発生リスクを低下させる可能性があるものの、それはがんになる前の話であり、がん、特に大腸がんが発症してから葉酸を大量に摂取すると逆にがんの進行を早めてしまうかもしれない

 

ということです。

 

ここで注意しなければならないのは、がん発症後に進行を早めるのは「大量に」葉酸を摂取した場合です。日本では厚生労働省からの発表で1日の葉酸摂取の上限を1,000μgと定めています(日本人の食事摂取基準-2015年版[PDF])ので、ここでいう「大量」の葉酸は1日1,000μg以上と考えられます。

 

つまり1日1,000μg未満を守っていればなんの問題もないということです。

 

まとめ

葉酸ががん予防に効果があるのか否か。

 

結論は今述べたように、リスク低下の可能性はあるが、がんを発症してからは逆にがんを進行させるリスクが上がる、というものでした。

 

どこかあいまいな表現になってしまいますが、現状で言えるのはここまでで、葉酸の役割の解明にはさらなる研究の成果を待たなければいけません。

 

またいっぽうでは、葉酸が不足することによる弊害は確実にあります。

 

1日の上限値をしっかり守って適量の葉酸を摂取することが、なによりも重要と言えるでしょう。

 

関連ページ一覧

椅子に座る妊婦のサムネイル

葉酸が神経管閉鎖障害のリスクを低減する理由なぜ葉酸が神経管閉鎖障害の予防につながるのでしょうか?この記事では神経管閉鎖障...

貧血の女性のサムネイル

巨赤芽球性貧血(悪性貧血)を予防する葉酸女性は男性に比べて貧血になりやすいといいます。これは月経があるため男性より鉄分不...

動脈硬化のサムネイル

葉酸で動脈硬化を予防できるって本当?葉酸にはさまざまな効能があります。その一つに「動脈硬化を予防する効果がある」というも...

うつ病のサムネイル

葉酸はうつ病に効果がある?葉酸がうつ病に効果がある、というのは聞いたことがあるでしょうか?わたしも最初は「そんなのサプリ...

疑問に思う女の子のサムネイル

がん予防に葉酸が効果があるは本当?葉酸の効果のひとつに「がん予防」があると言われていますが、本当なのでしょうか?葉酸サプ...

緑黄色野菜のサムネイル

葉酸不足によって起こる弊害まとめ他のビタミンに比べるとどちらかというと地味な栄養素である葉酸は、じつは欠乏するとヤバイ栄...

葉酸と小児ぜんそくの関係のサムネイル

葉酸サプリの過剰摂取が小児喘息の原因になるは本当?「葉酸サプリを飲むと生まれてくる子供が小児ぜんそくになりやすい」、とい...

免疫力のサムネイル

免疫力と葉酸の関係葉酸と免疫力に密接な関係があるのはたしかです。ネット上には「葉酸には免疫力を高める効果も」などと謳って...

このエントリーをはてなブックマークに追加